昔むかしのおはなしだろうか?

奥入瀬渓流

むかーしむかし
あるところに
おじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは山へしばかりに
おばあさんは川へせんたくにいきました。

おじいさんはいつものように山へいくふりをして、
ふらふらと峠のお茶屋さんへとやってきて

[ねえちゃんかわいいなあ
うちのばあさまととりかえてもらいてえなあ]

などと、バカな話をして笑いながら、
だんご片手にのんきにお茶を飲んでおりました。

そんなこと知らないおばあさんが洗濯物をもって
川でせんたくをしていると、
なにかが近づいて来ました。

おばあさんは
「あらっ?」
と首をかしげることになりました。

山へしばかりにいったはずのおじいさんと
若いお姉ちゃんが小さい舟に乗って
川上から流れて来たのです。

おばあさんは呆然としてしまい
せっかく洗った洗濯物が手から河原の石の上へぱさりと落ちました。

おじいさんはおばあさんに
まったく気が付きません。

しわしわの顔で一生懸命せんたくをしていたおばあさんは
悲しくなりました。

じいさまはあんな若い娘と

「うふふ」
「わはは」
なんて笑って、でれでれしていて

と、だんだん悲しさが怒りに変わり
カンカンに腹を立てたおばあさんは、
家を目指して、すっ飛んでいきました。

家の引き戸を開けると、砥石を土間に
ドンと
たたきつけて

「あのやろうゆるさねえ
帰ってきたらこのナタでぶったぎってやる」
と煮えたぎるハラワタから出る力で

しゅーっしゅーっ
しゅーっしゅーっ
しゅーっしゅーっ
しゅーっしゅーっ
しゅーっしゅーっしゅーっしゅーっ
と、
日が傾くまでナタを鋭くといでいました

あたりが夕焼けに染まる頃

なんにもなかったような顔をして、しばをせおった
おじいさんが
「帰ってきたで、ばあさまー」
っと
声をかけて引き戸をガラリと開けました。

すると
まあ
今までにみたことがない

鬼のような顔したおばあさんが仁王立ちして
右手にナタ、左手に薪をもってたっていたのです

じいさまはこわくてこわくて
腰をぬかしてしまい うごけなくなりました
おばあさんがドスをきかせた声で 

「じいさま
じいさまは若い娘がいいべ、
けんど
なーんも知らねえで洗濯してたうちの気持ちを考えたこと
あんたべか?
ああん
どうだべか!」
と、言いました

とっさにじいさまは
脇に立てかけてあった鍬をにぎりしめました。

おばあさんがナタをふりおろして
首にあたるかという瞬間に

腰を抜かしたおじいさんが
くわをにぎりながら
くるりと脇へよけました

すると
おばあさんが

「なんでよけんのよ!」

とどなりました

おじいさんは

「だって、だって。よよよ、よけなかったら死んじまうべ!」

と、震える小さな声で冬だというのに
汗びっしょりになりながら
答えました。
どうしておばあさんが怒っているのか
事の次第がのみこめたおじいさんは

「悪かった!
悪かった!
今回だけだから
命はたすけてくんろ」

とお手々とお手々をすり合わせて

「神様観音様仏様たすけてー」

とくりかえし、くりかえしさけびました。

すると、表からひとりの男がひょこりと顔をだしました。

おじいさんは
男に向かって

「たすけてーころされる!」
と助けを求めました。

おじいさんより若そうな男は
おばあさんのところへすっといき、

おばあさんの手からナタを取り上げて

「あんたのその男勝りなとこにほれた!
おれのよめになれ、
こんなろくでなしすてちめえ」
と言いました。

鬼のような顔したおばあさんの顔が
みるみるうちにゆるみ、
うっとりした目をしだしたのです。

そして

「そうする!」

と言って
左手にもっていた薪を土間へ、ぼとりと落としました。

それからふたりは家をでていきました。

その後おばあさんと男は
夫婦となり、
幸せにくらしましたとさ。

めでたしめでたし。

え、おじいさんはどうしたかって?
さあてな、だあれも知んねえんだとさ

ちゃんちゃん
どっすんこ

おしまい

よかったら、、、

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むんや

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「なんとでもなるさ」を合言葉に。 挑戦は続く。詳しいプロフィールはこちらから
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