まさかの来客

窓を開けていた。

子供が窓を閉めようとした時、「黒い何か」が入ったという。
しかし、部屋のどこにも見つからなかった。

それから2時間後。
食事の片付けも済み、やれやれと腰をおろしたところ、「何か」がおでこにコツンとぶつかった。
ぶつかって、飛び去った。
ハエにしては、飛び方がおかしい。
ようやく、壁に止まったのを見ると、確かにハエだった。

コイツは飲んでいる。
飲んで、ベロベロに酔っている。
その為にうまく飛べず、おでこにぶつかったりしているし、食べ物に興味も無いのだ。

空きカンの中に残ったアルコールでも、ひっかけてきたのだろう。
ハエならハエらしく、ブンブン ジグザグ飛び回れ。

私が知らなかっただけで、そとに出された空き缶の中の酒は、たくさんの虫が一杯ひっかけにやって来るものなのかもしれない。

となれば、酔ってしまって家を間違えたのだろう。
かわいそうに。

酢の入った瓶のまわりをくるくる回って、口先のブラシを使って酢を飲もうとしている。
酢は酒が更に発酵したものだ。
旨味が多いのだろう。

小皿に酢と酒をポタポタと垂らしたら、口先のブラシをトントンと皿につけて飲もうとするのだが、酔っていて酢にも酒にも辿り着けない。

景色は見えているのだろうか。
手脚の感覚も、匂いを察知する触角もおかしいらしい。
さかんに手をこすり合わせている。

泥酔した人が、もう一軒行くぞー!と言いながら、コップの酒にたどり着けないのに似ている。

とうとう、うしろ脚で羽をなではじめた。
人間だったら手を挙げて、タクシーに乗ったところ辺りだろうか。

ハエは部屋のどこかへと、飛んでいった。
と、思ったら戻ってきた。
人間だったら、あっちだこっちだと運転手を困らせた挙句に、元いた場所へ戻されたといったところか。

ハエには家族も友達もいない。
ふたたび、酢の入った瓶のまわりを歩き出した。

もう、その酢の瓶ごとあげる。

持ってけドロボー。
自家用のドローンにでも載せて、帰って。
自分のスマホで操作して安全運転でね。

テイクオフ!

もう、もどってくるなよ〜。

さすが酔っ払い。
もどってきやがった。
一晩たたなきゃ、帰ってくれそうにないな。

よかったら、、、

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むんや

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「なんとでもなるさ」を合言葉に。 挑戦は続く。詳しいプロフィールはこちらから
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